不動産売却に伴う「譲渡所得税」の申告、必要書類の準備や計算手続きなど、何かと煩雑です。
そんな方におすすめなのが、国税庁が提供する電子申告システム「e-Tax」です。
今回は、不動産譲渡所得税の申告におけるe-Taxのメリットについて、相続物件の売却も踏まえながら詳しく解説します。


不動産譲渡所得税とは?
不動産を売却すると、その売却益に対して課税されるのが「譲渡所得税」です。所有期間によって短期譲渡所得と長期譲渡所得に分けられ、それぞれ異なる税率が適用されます。
譲渡所得の種類 所得税 住民税
短期譲渡所得(所有期間5年以下) 30.63% 9%
長期譲渡所得(所有期間5年以上) 15.315% 5%
※ 上記の税率は、2024年7月10日時点のものです。


譲渡所得税の計算式
譲渡所得税の計算式は以下のとおりです。
譲渡所得 = 売却価額 - 取得費 - 譲渡費用
譲渡所得から取得費、譲渡費用の特別控除を差し引いた金額が、課税対象となる譲渡所得となります。


取得費とは?
取得費とは、不動産を取得するために支払った費用のことを指します。

取得費として認められるものと、その証明書類は以下の通りです。
取得費 内容 証明書類
購入代金 不動産を購入した際に支払った代金 売買契約書、手付金の領収書、売買代金の領収書
仲介手数料 不動産を購入した際に仲介業者に支払った手数料 仲介手数料の領収書
印紙税 売買契約書に貼付した印紙の代金 収入印紙を購入した際のレシート
司法書士費用 不動産登記手続きのために支払った司法書士費用 司法書士費用の領収書
登録免許税 不動産登記申請を行う際に支払う税金 司法書士費用の領収書
固定資産税 譲渡の年の前年の1月1日現在の課税標準額に係る税額 固定資産税の納税通知書
リフォーム費用 建物の増築、修繕、模様替え等のために支払った費用 リフォーム費用の領収書
増築費用 建物の面積を増やすために支払った費用 増築費用の領収書
その他、不動産を取得するために必要な費用 上記以外の不動産取得のために支払った費用 それぞれの費用の領収書


譲渡費用とは?
譲渡費用とは、不動産を譲渡するために支払った費用のことで、譲渡所得税の計算においては、売却価額から差し引くことができます。

譲渡費用には、以下のようなものが含まれます。
譲渡費用 内容 証明書類
仲介手数料 不動産売買の仲介を依頼した際に支払った手数料 仲介手数料の領収書
印紙税 売買契約書に貼付した印紙の代金 収入印紙を購入した際のレシート
司法書士費用 不動産売却に際して登記手続きが必要となった場合の費用 司法書士の領収書
登録免許税 不動産登記申請を行う際に支払う税金 司法書士の領収書
境界確定費用 不動産売買の前提として行った境界確定の費用 土地家屋調査士の領収書
解体費用 不動産を売却するために建物を解体した費用 解体業者の領収書
建物滅失登記費用 建物を解体した際に必要となる不動産登記手続きの費用 土地家屋調査士の領収書
譲渡に伴うローン返済手数料 不動産売却に伴い、住宅ローン等の借入金を返済した際に支払った手数料 金融機関発行の返済手数料の領収書
その他、不動産を譲渡するために必要な費用 上記以外の費用 費用の領収書


もし、取得費・譲渡費用の書類がない場合
不動産売却時の譲渡所得計算において、取得費や譲渡費用の証明書類がない場合でも、以下の方法で算出することが可能です。
取得費・譲渡費用の証明方法 内容 注意点
代替書類による証明
  • 銀行通帳: 購入代金やリフォーム費用等の支払い履歴
  • クレジットカード明細: 購入代金や仲介手数料等の支払い履歴
  • 不動産登記簿: 取得価額や抵当権設定状況
  • 固定資産税納税通知書: 固定資産税額
  • 写真: リフォーム前後の写真等で、リフォーム内容が推定できるもの
概算取得費による計算 売却代金の5%を概算取得費として計上
  • 実際の取得費が5%を下回る場合でも、5%で計算
  • 譲渡所得が大きくなり、税負担が重くなる可能性
不明経費控除の適用 譲渡費用の一部が不明な場合、その部分を控除
  • 控除額: 売却代金の1%
  • 実際の譲渡費用が1%を下回る場合でも、1%で控除
  • 譲渡所得が大きくなり、税負担が重くなる可能性
税務署への相談 上記の方法でも証明が難しい場合は、相談
  • 相談内容: 取得費・譲渡費用の証明書類がない状況と、代替書類等
  • 個別の状況に応じて、適切なアドバイスや指導

いずれの方法を選択する場合も、正確な金額を証明することが望ましいです。
不明な点があれば、税務署等に相談することをおすすめします。


相続不動産の売却でも譲渡所得税の確定申告が必要?
相続で取得した不動産を売却した場合も、譲渡所得税の申告が必要となります。
相続税が課税されないケースでも、相続した不動産を売却するとなると、別途譲渡所得税が必要になることを考慮しておく必要があります。
たとえ、ご自身で購入した不動産ではない場合でも、被相続人が所有権を取得した時点で取得価額が発生するため、売却益が出た場合は課税対象となります。

なお、相続によって取得した不動産の場合、被相続人が取得した際の取得費も相続人の取得費となります。
取得費の領収書などを保管しておくと、後々申告時にスムーズに手続きすることができます。


相続物件の不動産譲渡所得税の控除
相続した不動産を売却する場合、以下の控除制度を利用することで、譲渡所得税を軽減することができます。
控除制度 適用条件 控除額
3,000万円特別控除
  • 被相続人が所有していた土地等に建っていた建物を、相続人が居住用財産として取得し、一定期間住んでいた後に売却する場合
  • 建物50㎡未満のワンルームマンション等の場合
土地等及び建物の取得価額の合計額から3,000万円を控除
居住用財産の買い換え特例
  • 被相続人が所有していた土地等に建っていた建物を、相続人が居住用財産として取得し、一定期間住んでいた後に売却する場合
  • 新たに取得する居住用財産を、売却した居住用財産の譲渡所得の申告年の翌日から起算して1年以内で購入する場合
新たに取得する居住用財産の取得価額の50%を限度として、譲渡所得から控除
特定居住用財産の買換え等による譲渡所得の非課税措置
  • 被相続人が所有していた土地等を、相続人が居住用財産として取得し、一定期間住んでいた後に売却する場合
  • 新たに取得する居住用財産を、売却した居住用財産の譲渡所得の申告年の翌日から起算して2年以内で購入する場合
譲渡所得を非課税とする

※ 上記はあくまで一般的な概要であり、個別の状況によって適用条件や控除額が異なる場合があります。詳細は、国税庁のホームページ等でご確認ください。

これらの控除制度を正しく適用することで、譲渡所得税を大幅に軽減することができます。


相続不動産の売却には前提として相続登記が必要!
相続物件を売却するには、前提として、必ず相続登記を済ませておく必要があります。
相続登記を済ませることで、相続人のうち誰が売主となるのかを確定させ、買主への所有権移転登記を申請するためにも必要となります。
売却代金を相続人で分けるケースでも、それに応じた方法があるので、お気軽にご相談ください。


e-Taxで申告するメリット
不動産譲渡所得税の申告をe-Taxで行うと、次のようなメリットがあります。

  • 自宅から申告可能: インターネット環境があれば、自宅のパソコンやスマートフォンから申告できます。
  • 24時間いつでも申告可能: 時間や場所に縛られずに、好きなタイミングで申告できます。
  • 申告漏れを防げる: 入力ミスや計算ミスを検知する機能があり、申告漏れを防ぐことができます。
  • 源泉徴収票の添付が不要: 源泉徴収票をスキャンするだけで添付できるので、郵送の手間が省けます。
  • 還付金が早い: 申告後、約3週間で還付金が受け取れます(書面の場合は約1~1.5ヶ月)。


まとめ
不動産譲渡所得税の申告は、e-Taxを利用することで、場所や時間を選ばずに、簡単に、しかも早く済ませることができます。
特に、相続物件の売却の場合にも、e-Taxは大変便利です。

なお、相続した不動産は相続登記により名義を相続人に移しておかないと、そもそも売却することができません。
そして、相続税が非課税であっても、不動産の売却により譲渡所得税の確定申告が必要となるので、注意が必要です。

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