放置空き家流通へ仲介料引き上げ 上限30万円、対象拡大
【イブニングスクープ】

国土交通省は放置空き家の市場流通を後押しするため、不動産業者が受け取る仲介手数料の上限額を18万円から30万円へ引き上げる。売却額400万円以下の空き家に適用する特例制度の対象を同800万円以下に広げる。

現行制度は400万円以下で状態が悪い物件を「低廉な空き家」と定義し、特例で仲介手数料を最大18万円と宅地建物取引業法が定める一般的な空き物件の上限よりも高く設定している。近く同法の告示改正によ...

日本経済新聞 2024年5月21日 18:00 [有料会員限定記事]

相続したけど使い途がなく、放置されている空き家等(空き家およびその敷地のことをいいます)の流通促進に向けて、国土交通省が「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることのできる報酬の額(昭和45年建設省告示第1552号)(以下、「告示」)」を改正し、低廉な空き家の売買を媒介した場合の仲介手数料の上限の引き上げを行うとのことです。

通常の宅地・建物の売買を媒介した場合、宅建業者は仲介手数料という形で成功報酬を受け取ることになりますが、この仲介手数料は売買金額に応じて、次のとおり上限額が定められています(告示第二)。

売買価格 報酬額の上限
200万円以下の金額 売買価格の5.5%
200万円を超え400万円以下の金額 売買価格の4.4%
400万円を超える金額 売買価格の3.3%
※ この金額は媒介契約を締結している一方当事者からの受け取る額の上限で、売主・買主両方と媒介契約を締結している場合には、両方からそれぞれ上記の金額を上限とする報酬を受け取ることが可能です。

そして、宅建業者は不動産売買の媒介にあたり、依頼者の依頼によって行う広告の料金以外には、理由の如何を問わず、上記の報酬以外の手数料などを受け取ることが禁止されています(告示第九①)。

第9 第2から第8までの規定によらない報酬の受領の禁止
(1)宅地建物取引業者は、宅地又は建物の売買、交換又は貸借の代理又は媒介に関し、第2から第8までの規定によるほか、報酬を受けることができない。ただし、依頼者の依頼によって行う広告の料金に相当する額については、この限りでない。

このような規制があるため、売買金額が低くなってしまう不動産の売買については、宅建業者は受け取ることができる報酬の額も少なくなるので、消極的な対応になってしまいます。

むしろ、安くなってしまうような郊外の不動産の場合、依頼物件が遠方にあったり、インフラが未整備であったり、様々な法令上の制限が設けられていたりするなど、宅建業者が行う重要事項説明書作成のための事前調査にかかるコストが増える傾向があり、宅建業者のモチベーションが下がるのは致し方ないかもしれません。

そこで、国土交通省は平成30年1月1日施行の改正「告示」で、新たに第七「空家等の売買又は交換の媒介における特例」、第八「空家等の売買又は交換の代理における特例を設け、
通常の不動産売買よりも報酬額の上限の基準を緩和し、一般の宅地建物の売買よりも多くの報酬(現行は、18万円+消費税)を受け取れるようにしています。


今回の改正により大きく変わるのが、「低廉な空家等」の定義です。
従来は、消費税抜きの売買金額が「400 万円以下の金額の宅地又は建物」とされていたところ、「800万円以下の金額の宅地又は建物」とされ、適用範囲が拡大されます。

また、このような「低廉な空家等」の報酬額の上限が、従来は18万円(税抜)だったところ、30万円(税抜)に上がることになります。

さらに、従来は空き家の賃貸借契約の媒介・代理に関しては、特例は存在しませんでしたが、長期の空家等に関しての媒介・代理における仲介手数料などの特例が新設されます。


宅地建物取引業者の報酬額の一部改正の概要

(1)低廉な空家等の売買又は交換の媒介における特例の改正
第七「空家等の売買又は交換の媒介における特例」を改正し、低廉な空家等(売買に係る代金の額(消費税等相当額を含まないものとする。)又は交換に係る宅地若しくは建物の価額(消費税等相当額を含まないものとし、宅地又は建物の価額に差があるときは、これらの価額のうちいずれか多い価額とする。)が 800 万円以下の金額の宅地又は建物をいう。)の売買又は交換の媒介に関して依頼者から受ける報酬の額(消費税等相当額を含む。)については、宅地建物取引業者は、第二「売買又は交換の媒介に関する報酬の額」の規定にかかわらず、当該媒介に要する費用を勘案して、第二の計算方法により算出した金額を超えて報酬を受けることができることとし、この場合において、当該依頼者から受ける報酬の額は30 万円の1.1倍に相当する金額を超えてはならないこととする

(2)低廉な空家等の売買又は交換の代理における特例の改正
第八「空家等の売買又は交換の代理における特例」を改正し、(1)の低廉な空家等の売買又は交換の代理については、宅地建物取引業者が空家等の売買又は交換の代理に関して依頼者から受けることのできる報酬の額(消費税等相当額を含む。)は、第三「売買又は交換の代理に関する報酬の額」の規定にかかわらず、上記(1)の規定により算出した金額の2倍以内とし、ただし、宅地建物取引業者が当該売買又は交換の相手方から報酬を受ける場合においては、その報酬の額と代理の依頼者から受ける報酬の額の合計額が上記(1)の規定により算出した金額の2倍を超えてはならないこととする。

(3)長期の空家等の貸借の媒介における特例の創設
第四「貸借の媒介に関する報酬の額」の特例として、長期の空家等(現に長期間にわたって居住の用、事業の用その他の用途に供されておらず、又は将来にわたり居住の用、事業の用その他の用途に供される見込みがない宅地又は建物をいう。)の貸借の媒介については、宅地建物取引業者は、借主である依頼者から受ける報酬の額が借賃の1ヶ月分以内(居住用の場合は 0.5 ヶ月分以内(媒介の依頼を受けるに当たって借主の承諾を得ている場合を除く。))である場合に限り、第四の規定により算出した金額を超えて、合計で借賃の2ヶ月分までの範囲で報酬を受けることができることとする

(4)長期の空家等の貸借の代理における特例の創設
第五「貸借の代理に関する報酬の額」の特例として、(3)の長期の空家等の貸借の代理については、宅地建物取引業者は、貸主である依頼者から、第五の規定により算出した金額を超えて、借賃の2ヶ月分までの範囲で報酬を受けることができることとし、ただし、宅地建物取引業者が当該貸借の相手方から報酬を受ける場合においては、その報酬の額(借賃の1ヶ月分以内(居住用建物の場合であって、当該相手方から媒介の依頼を受けており、かつ、当該相手方の承諾を得ていない場合は、借賃の 0.5 ヶ月分以内)に限る。)と代理の依頼者から受ける報酬の額の合計額が借賃の2ヶ月分を超えてはならないこととする。

(5)その他
① 上記(1)から(4)までの改正に伴い、所要の規定の整理等の措置を講ずる。
② なお、媒介契約の締結に際しあらかじめ、上記の上限の範囲内で、報酬額について依頼者に対して説明し、合意する必要があることを「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」(通達)に明記する。

相続登記後、「相続した不動産を処分したい」というご要望はよく聞くのですが、そのような不動産は売買金額が低額であることが多く、宅建業者の方に持ち込んでも、あまりいい顔はされません。

相続人の方が「費用の方が多くなっても…」という話をしても、宅建業法で報酬額の上限が定められているため、宅建業者の方にとっても手間とコストだけがかかってしまうので、買主探しに動いてもらえず、昨年4月からスタートした「相続土地国庫帰属制度」を検討することになります。

「相続土地国庫帰属制度」1筆あたり20万円以上の負担金を支払って国に引き取ってもらう制度で、しかも、国庫に帰属させるための要件を満たすために、境界を明らかにしたり、建物を解体する必要があるなど、決して安くない付随費用がかかります。
法務局での審査も、土地1筆当たり14,000円の手数料がかかり、司法書士も申請書類の作成をタダで行うわけではありません。

結局「このまま放置するしかない」という結論になってしまうのです。

今回の改正で、使い途のない相続した不動産の流通が、少しでも促進されることを期待したいところです。

なお、改正後の「国土交通省告示」は、今年令和6年7月1日に施行が予定されています。



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