「相続税対策※のために、息子の嫁を養子にしたが、子としての役目を一切果たさず、自分の遺産目当てだったから、養子縁組の解消したい」との相談を受けることがあります。
「養子縁組」とは、親子の血縁関係とは無関係に、人為的に親子関係を発生させることをいい、その結果、当事者(養子縁組による親のことを「養親」、養子縁組による子のことを「養子」といいます)となった人の法定相続人を増やす効果があります。
1.養子縁組の効果
養子縁組には、「普通養子」と「特別養子」がありますが、「特別養子」が様々な事情により実親が子を育てられない場合に、養子と実親との親子関係を終了させ、本当の親子と同様の関係を作る子の福祉のための制度であるのに対し、相続税対策として利用されるのは「普通養子」です。
「普通養子」の場合、養子と実親の親族関係は終了せず、養子は養親と親子関係になりますが、実親との関係でも親子であり、二重の親子関係を作るものです。
その結果、養子は、養親が亡くなった場合の相続人になることができるとともに、実親が亡くなった場合にも相続人にもなります。
なお、養子縁組を行うことで、法定相続人を増やすことになりますが、相続税の基礎控除の適用を受けるには制限があります。
通常、相続税の基礎控除は、3000万円+法定相続人の数×600万円ですが、被相続人に養子以外の子がいる場合には1名(600万円)まで、養子以外に子がいない場合は2名(1200万円)までしか、法定相続人の数に加算することが認められていません。
2.離縁
養子縁組の解消のことを「離縁」といい、その結果、養子縁組により形成された親族関係を将来に向かって消滅させることになります。
離縁は、当事者間で合意が成立している場合(「協議離縁」)は、「養子離縁届」を養親か養子の本籍地・住所地の役所に提出することで行うことができますが、一方が離縁することを拒絶している場合や協議できない場合には、家庭裁判所での「離縁調停」や「離縁の訴え」(これらを「裁判上の離縁」といいます)を提起して離縁を求めていくことになります。
また、当事者の一方の死亡後も、家庭裁判所の許可を得ることで離縁を行うことができます(”死後離縁” 民法第811条第6項)。
なお、「養子離縁届」には、成人に達した証人2名の署名が必要なほか、当事者の本人確認書類の提示が必要となります。
3.裁判上の離縁
裁判上の離縁を行う場合、通常は訴訟手続きではなく、「離縁調停」の申立てをし、家事調停事件として、行われます(家事事件手続法第257条(調停前置主義))。
なお、調停を申し立てる家庭裁判所は、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所です。

(離縁調停申立書の記載例)
家庭裁判所が離縁を認めるための要件(離縁原因)が民法第814条第1項で定められおり、裁判所はこれらの事由に適合するかを判断して、離縁できるかどうかが決まります。
なお、「1 他の一方から悪意で遺棄されたとき。」「2 他の一方の生死が三年以上明らかでないとき。」の要件を満たしていると判断できる場合でも、裁判所は諸般の事情を考慮して、離縁を認めないことができます(裁量棄却 民法第814条第2項)。
養子縁組を解消すると養親子間で合意できないと、裁判上の手続きが必要となり、以上の離縁原因があると裁判所が認めなければ離縁ができないので、「相続税対策のため」と安易に養子縁組を行うべきではありません。
4.離縁原因
離縁原因について、それぞれ見ていきます。
① 悪意の遺棄
養親子間には同居義務がないとされているので、”悪意の遺棄”は扶養義務違反の有無について判断されることになります。
② 3年以上の生死不明
”生死不明”とは、生存の立証も、死亡の立証もできないことであり、単なる音信不通では認められないとされています。
また、過去に3年間生死不明であっても、現在、生死がわかっている場合も認められません。
戦後の裁判例は存在しないようです。
③ 縁組を継続し難い重大な事由
離縁原因に関する裁判例のほとんどが、この”縁組を継続し難い重大な事由”の有無に関するものです。
そして、裁判例は総合的・個別的判断によることを繰り返し提示しています。
なお法律学的には、”縁組を継続し難い重大な事由”とは、「養親子としての精神的、経済的生活関係を維持もしくは回復することが極めて困難なほどに縁組を破綻せしめる事由の存在する場合であり、これ以上縁組の継続を強制しても、正常な親子的社会関係の回復が期待できない場合」とされています。
また、当事者の一方または双方に有責事由がある場合に限られません。
裁判所が離縁原因ありと判断した裁判例で代表的なものは、以下の通りです。
あくまで事案ごとに個別的・総合的に判断するものであり、一概に同じような状況だからといって、離縁が認められるとは限らないことに注意が必要です。
「養子縁組」とは、親子の血縁関係とは無関係に、人為的に親子関係を発生させることをいい、その結果、当事者(養子縁組による親のことを「養親」、養子縁組による子のことを「養子」といいます)となった人の法定相続人を増やす効果があります。
※ 法定相続人を増やすことによって、相続税対策として次の効果があります。
- 相続税の基礎控除額の拡大
- 生命保険等の非課税枠の拡大
- 超過累進税率の引き下げ
1.養子縁組の効果
養子縁組には、「普通養子」と「特別養子」がありますが、「特別養子」が様々な事情により実親が子を育てられない場合に、養子と実親との親子関係を終了させ、本当の親子と同様の関係を作る子の福祉のための制度であるのに対し、相続税対策として利用されるのは「普通養子」です。
「普通養子」の場合、養子と実親の親族関係は終了せず、養子は養親と親子関係になりますが、実親との関係でも親子であり、二重の親子関係を作るものです。
その結果、養子は、養親が亡くなった場合の相続人になることができるとともに、実親が亡くなった場合にも相続人にもなります。
なお、養子縁組を行うことで、法定相続人を増やすことになりますが、相続税の基礎控除の適用を受けるには制限があります。
通常、相続税の基礎控除は、3000万円+法定相続人の数×600万円ですが、被相続人に養子以外の子がいる場合には1名(600万円)まで、養子以外に子がいない場合は2名(1200万円)までしか、法定相続人の数に加算することが認められていません。
2.離縁
養子縁組の解消のことを「離縁」といい、その結果、養子縁組により形成された親族関係を将来に向かって消滅させることになります。
離縁は、当事者間で合意が成立している場合(「協議離縁」)は、「養子離縁届」を養親か養子の本籍地・住所地の役所に提出することで行うことができますが、一方が離縁することを拒絶している場合や協議できない場合には、家庭裁判所での「離縁調停」や「離縁の訴え」(これらを「裁判上の離縁」といいます)を提起して離縁を求めていくことになります。
また、当事者の一方の死亡後も、家庭裁判所の許可を得ることで離縁を行うことができます(”死後離縁” 民法第811条第6項)。
民法第811条第6項
縁組の当事者の一方が死亡した後に生存当事者が離縁をしようとするときは、家庭裁判所の許可を得て、これをすることができる。
縁組の当事者の一方が死亡した後に生存当事者が離縁をしようとするときは、家庭裁判所の許可を得て、これをすることができる。
なお、「養子離縁届」には、成人に達した証人2名の署名が必要なほか、当事者の本人確認書類の提示が必要となります。
(養子離縁届の様式)
3.裁判上の離縁
裁判上の離縁を行う場合、通常は訴訟手続きではなく、「離縁調停」の申立てをし、家事調停事件として、行われます(家事事件手続法第257条(調停前置主義))。
なお、調停を申し立てる家庭裁判所は、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所です。
家事事件手続法第257条第1項(調停前置主義)
第244条(調停事項等)の規定により調停を行うことができる事件について訴えを提起しようとする者は、まず家庭裁判所に家事調停の申立てをしなければならない。
第244条(調停事項等)の規定により調停を行うことができる事件について訴えを提起しようとする者は、まず家庭裁判所に家事調停の申立てをしなければならない。

(離縁調停申立書の記載例)
家庭裁判所が離縁を認めるための要件(離縁原因)が民法第814条第1項で定められおり、裁判所はこれらの事由に適合するかを判断して、離縁できるかどうかが決まります。
民法第814条第1項(裁判上の離縁)
縁組の当事者の一方は,次に掲げる場合に限り,離縁の訴えを提起することができる。
縁組の当事者の一方は,次に掲げる場合に限り,離縁の訴えを提起することができる。
- 他の一方から悪意で遺棄されたとき。
- 他の一方の生死が三年以上明らかでないとき。
- その他縁組を継続し難い重大な事由があるとき。
なお、「1 他の一方から悪意で遺棄されたとき。」「2 他の一方の生死が三年以上明らかでないとき。」の要件を満たしていると判断できる場合でも、裁判所は諸般の事情を考慮して、離縁を認めないことができます(裁量棄却 民法第814条第2項)。
養子縁組を解消すると養親子間で合意できないと、裁判上の手続きが必要となり、以上の離縁原因があると裁判所が認めなければ離縁ができないので、「相続税対策のため」と安易に養子縁組を行うべきではありません。
4.離縁原因
離縁原因について、それぞれ見ていきます。
① 悪意の遺棄
養親子間には同居義務がないとされているので、”悪意の遺棄”は扶養義務違反の有無について判断されることになります。
| 裁判例 | |
|---|---|
離縁 〇 |
養親が生活の基礎となる所有家屋および土地の一切を他に売却して、養子を残して転居した事例(福島地判昭32.1.18) |
| 養子が、資力のない年老いた養母と円満な養親子関係を継続する意思を欠き蔑ろにし、さらに生活費を渡すことなく別居した事例(福島家審昭42.9.12) | |
離縁 × |
養子の家出が養親の叱責訓戒に対する不満から、養親の旧式な思想に反省の機を与え得るものと信じてとった行動であり、養親等の生活を無視し親子共同体を破壊しようとの意図からとはいえないとした事例(京都地判昭25.1.23) ※ただし、「縁組を継続し難い重大な事由」にあたるとして離縁を認容 |
② 3年以上の生死不明
”生死不明”とは、生存の立証も、死亡の立証もできないことであり、単なる音信不通では認められないとされています。
また、過去に3年間生死不明であっても、現在、生死がわかっている場合も認められません。
戦後の裁判例は存在しないようです。
③ 縁組を継続し難い重大な事由
離縁原因に関する裁判例のほとんどが、この”縁組を継続し難い重大な事由”の有無に関するものです。
そして、裁判例は総合的・個別的判断によることを繰り返し提示しています。
なお法律学的には、”縁組を継続し難い重大な事由”とは、「養親子としての精神的、経済的生活関係を維持もしくは回復することが極めて困難なほどに縁組を破綻せしめる事由の存在する場合であり、これ以上縁組の継続を強制しても、正常な親子的社会関係の回復が期待できない場合」とされています。
また、当事者の一方または双方に有責事由がある場合に限られません。
裁判所が離縁原因ありと判断した裁判例で代表的なものは、以下の通りです。
あくまで事案ごとに個別的・総合的に判断するものであり、一概に同じような状況だからといって、離縁が認められるとは限らないことに注意が必要です。
| 類型 | 裁判例 |
|---|---|
| 暴行・虐待・重大な侮辱 | 老齢の養父母に対する養子の暴言・押し倒し・足蹴にするといった暴行があったとされた事例(最判昭60.12.20) |
| 養子が養親に対して暴言や侮辱的発言をしたとされた事例(横浜地判昭40.4.16) | |
| 養親が性的同棲関係にある養女に対し暴行虐待を加え、雇人との肉体関係を強要した事例(福島家審昭41.8.11) | |
| 絶縁・長期の別居 | 10年以上にわたり別居し、精神的・物質的な交流を欠いていた事例(最判昭40.5.21) |
| 縁組後4年間、同居もせず、現在では互いに養親子として交流を図る意思を失っているとされた事例(東京地判平16.8.23) | |
| 無断家出をし、復帰の懇願にまったく耳を貸さない事例(京都地判昭25.1.23) | |
| 長期間の音信不通、交際も扶養関係もなく互いに親子の情愛を失っているとされた事例(東京高判平5.8.25、東京地判平5.12.24) | |
家業の承継や金銭等をめぐる養親子間の不和・対立 |
養子に家業の維持発展に努める意思と気力がなく、養親も希望を失って縁組を継続する意思がないとされた事例(横浜地判昭40.4.16) |
| 経済的対立・確執があるとされた事例(大阪地判昭48.1.23) | |
| 遺産をめぐり生じた長期間にわたる葛藤に縁組継続が困難とされた事例(東京高判昭57.10.21) | |
| 養子が養親の承諾を得ないまま勝手に養親名義の信託預金証書を持ち出して処分したり、土地の持分を勝手に処分して養親の不信感を助長増大させた事例(東京高判平5.8.25) | |
| 縁組当事者の一方の夫婦関係の破綻 | 養親が自分の後継者にするつもりで、娘と養子を結婚させ、養子縁組をしていたケースで、養子が些細なことで妻(養親にとっての娘)に暴言を吐いたり、暴行を加えたりして、養子と養親の娘の間で離婚訴訟が提起されるに至り、次第に養親子間の対立を深めていった事例(最判昭36.4.7) |
| 夫の連れ子を養子とした場合に、夫婦間に婚姻を継続し難い重大な事由があるときは、養親子間にも同様に”縁組を継続し難い重大な事由”があるとした事例(京都地判昭39.6.26) |

