相続人なき「さすらう資産」 国庫に入った額、10年で倍に
くらしの数字考

死後に相続人不在などの理由で国に入る「相続人なき遺産」がこの10年間で倍増した。金融機関で10年以上取引がない「休眠預金」の活用も増える。持ち主が不在のために、さすらう資産の行方を探った。

子や配偶者などの相続人を持たない人が遺言を残さず亡くなると、裁判所が選んだ相続財産清算人が債務を返済するなどして遺産を整理し、残りは国庫に入ることになる。この額が2022年度に768億円と、10年前の375億円...

日本経済新聞 2024年5月4日 5:00[会員限定記事]

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相続人がいないことを「相続人不存在」といい、家庭裁判所で選任された相続財産清算人による手続きを経て、民法第959条において、最終的に「国庫に帰属する」ことが定められています。

第959条【残余財産の国庫への帰属】
前条(特別縁故者に対する相続財産の分与)の規定により処分されなかった相続財産は、国庫に帰属する。この場合においては、第956条第2項(相続財産管理人の管理の計算)の規定を準用する。

記事によれば、この国庫帰属した相続財産が、2022年度768億円と、10年前の2012年度の375億円から倍増し、その要因として、子や配偶者がいない方、いわゆる「おひとり様」の増加や、不動産価格の上昇、高齢世帯に資産が集中しているなどの事情が考えられるとのこと。

2012年に約1519万人だった75歳以上は、2022年に約1936万人に増加しており、この間も後期高齢者の生涯未婚率はほとんど変化しておらず、子や配偶者のいない人も同様に増えていると推測されており、同様に「相続人なき遺産」の国庫帰属は増えていくことが予想されます。

そこで、「相続人なき遺産」の行き先を、本人が定める「遺贈寄付」が注目されています。

なお、「遺贈寄付」は、記事にあるような「相続人なき遺産」のケースに限らず、「人生最後の社会貢献」として選択肢に入れる方が増えているようです。

「遺贈寄付」の方法として一般的な方法は、自筆証書遺言や公正証書遺言などの方法で「遺言」に残すことですが、このほかに信託を利用して「遺贈寄付」する方法があります。

遺贈寄付に使える信託としては、「遺言代用信託」や「生命保険信託」などがあり、遺贈寄付の対象となる財産が、信託財産として受託者に移転して管理されるため、遺言のように形式不備や遺贈の放棄などで財産が引き渡されないことがなく、確実に寄付を実行できるというメリットがあります。
また、申し込みの方法も、申込書や契約書の記入だけの簡単な手続きで行えるようです。

しかし、信託は契約であるため、次のようなデメリットが存在します。
  • 取引のある金融機関でそのような信託商品が存在せず、新たな金融機関に口座を開設しなければならないことがある。
  • 金融機関が指定した寄付先(自治体など)に限定されているケースが多い。
  • 心変わりをして簡単に撤回してしまうことができない(手数料を取られる)ものが存在する。
  • 手続きに手数料がかかる。

信託による寄付と遺言による寄付の比較
信託による寄付 遺言による寄付
作成する書面 信託契約書 遺言書
手続きの難易度 簡単 やや大変
意思決定時の財産 受託者(金融機関)に移転 遺言者が所有したまま
意思決定後の財産 受託者(金融機関)が管理・運用 遺言者が自由に使用
死亡時等における手続き 受託者(金融機関)が受益者(寄付先)に引き渡し 遺言執行者が手続き
手続きに必要な費用 一般的には有料 公正証書遺言の作成は有料
法務局保管遺言以外の自筆証書遺言の場合は遺言書の検認が必要


また、「不動産を寄付する」「全財産を寄付する」という内容で、遺言書を作成する場合は注意が必要です。

よかれと思って「遺贈寄付」の遺言書を残していても、寄付先の受入態勢が整っておらず、処分に困ってしまい「遺贈を放棄するしかないという状況になってしまうことがあります。

この時点で、遺贈寄付のための遺言を残したご本人はこの世にいないため、遺言の変更もできず、取り返しのつかないことになっていまいます。

自分が寄付しようしている財産を寄付先が必要としているのかの確認は必須でしょう。

現金でしか寄付を受け入れていないという機関も多いので、この場合は遺言執行者の選任が必要となり、遺言執行者が遺産を換価してから、寄付先に振り込みを行うという流れになります。

また、遺言寄付先を選定する上で、まず少額の寄付をしてみることもお勧めです。
多くの機関では、寄付した人に対して活動状況の報告を行っており、寄付したお金がどのような目的で活用されたのかを知ることができます。
あとから心変わりして、遺言の作り直しなどを防ぐ意味でも、寄付先の活動内容や寄付した財産の用途などをしっかり確認することは、後悔のない遺贈寄付を行うために必要でしょう。

遺贈寄付は、ご自身が生きている間に利益をもたらしてくれるものではありませんが、遠い未来に、自分が行った寄付が、思い描く社会を実現するための確かな一歩になる、そう信じることはご自身に誇りをもたらしてくれるはずです。
まずは、寄付先を探してみることから始めてみるのも良いかもしれません。


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