離婚後の「共同親権」導入 運用・支援策を国会で議論へ

政府は8日、離婚後の共同親権の導入を柱とする民法などの改正案を閣議決定した。離婚時に父母が協議し共同親権か単独親権かを決め、意見が一致しなければ家庭裁判所が判断する。子の利益を最優先とするための運用や支援のあり方といった課題は今後の国会審議の論点となる。


法制審議会(法相の諮問機関)がおよそ3年にわたり議論した。家族法制の大幅な見直しに踏み切る背景には、少子化や共働きの増加、男女ともに育児を担う考え方の浸透といった社会の変化がある。

現行法は離婚後の親権は父母どちらかにしか認めていない。親権のない親が離婚後、子育てに関与しづらくなるほか、養育費の未払いにつながっているとの指摘があった。

改正案は離婚後の親権者について、父母の協議により双方か一方かを決めると規定する。父母の間で親権のあり方が決まらなくても家裁に申し立てをすることで離婚できるようになる。

「子の利益」を害すると家裁が判断した場合は単独親権とする。①子へ虐待などの恐れがある②父母間の暴力などの恐れを背景に共同親権の行使が難しい――と認められる場合を想定している。

父母の責務も明確にした。父母は婚姻しているかに限らず協力し、子の人格を尊重して自身と同程度の生活を維持できるように扶養しなければならないと明記した。

養育費も確保しやすくする。取り決めなしに離婚しても一定額を請求できる「法定養育費」制度を創設する。養育費に他の債権よりも優先的に請求できる「先取特権」を付与し、一般的に認められる額を確保できるようにする。

厚生労働省の調査によると、母子世帯の中で「現在も養育費を受けている」と答えたのは3割ほどにとどまる。

虐待やドメスティックバイオレンス(DV)被害者らの間には、家裁が適切、迅速に認定できるかどうかに疑問の声があがっている。離婚後に共同親権にすることで加害者側が親権を理由につきまとう恐れについても懸念が出ている。

法制審議会は要綱案のとりまとめに際し、子どもが不利益を受けないように行政や福祉などの充実した支援を求める付帯決議をつけた。

改正案は8日、国会に提出された。国会審議でも役割が大きくなる家裁の体制拡充や判断基準づくり、行政支援のあり方などが議論される見通しだ。

小泉龍司法相は8日の記者会見で「社会的なニーズを踏まえて子どもの利益を中心に組み立てられた法案だ。国会で国民に立法趣旨を理解してもらえるようにしたい」と述べた。

5日の自民、公明両党の政策責任者会議では「法整備は家裁の体制強化が条件だ」との指摘が出た。与党内には法整備にDV被害者らの不安の払拭が欠かせないとの意見がある。

立憲民主党の泉健太代表は8日の記者会見で「人権尊重や子どもの安全など色々な面から慎重な検討が必要だ」と語った。党内議論を踏まえて法案への賛否を決めると説明した。

改正案は共同親権であってもDVからの避難など「子の利益のために急迫の事情」がある場合や、子の教育などに関わる日常の行為は単独で親権行使ができるとする。政府側は国会の答弁などで「急迫の事情」などの具体的な考え方を示す予定だ。

日本経済新聞 2024年3月8日 18:39 (2024年3月8日 19:03更新)

現在、未成年の子のある夫婦が婚姻中は、夫婦が共同して親権を行使する「共同親権」を原則とし(民法818条1項)、未成年の子のある父母が離婚する際、父母のいずれか一方を親権者として定めなければならないとする「単独親権」となっています(民法819条1項・2項)。
これは居住を別にするため、現実に親権を共同行使することは困難であるとの理解に基づくものです。

一方で、学説上、「親権者」と「親権を行使する者」を分けて考え、親である以上、当然に「親権者」であり、単独で親権を行使できるケースでは、他方は親権が停止されていると考える説も存在します。
この見解は同居しない側の親にも親としての責任があることの理論的根拠となり、記事にある「法定養育費制度」の根拠になっているものと考えられます。

民法第818条(親権者)
  1. 成年に達しない子は、父母の親権に服する。
  2. 子が養子であるときは、養親の親権に服する。
  3. 親権は、父母の婚姻中は、父母が共同して行う。ただし、父母の一方が親権を行うことができないときは、他の一方が行う。

ちなみに、この見解に立った場合、単独で親権を行使していた者が死亡した場合、他方親が当然に親権を行使する者となる見解に親和的ですが、裁判所は他方親の親権が当然に復活するわけではなく、未成年後見人の選任の前後を問わず、他方親による親権者変更の申立てを認め、他方親が親権者変更により親権者となる可能性を認める見解(無制限回復説)に立っていると考えられています。

なお、協議離婚の際、父母の間で「養育費を請求しない」旨の合意をされることがありますが、親権者といえども子の“扶養を受ける権利”を放棄するを放棄することはできないため、子からの養育費の請求を否定されないと考えられています(札幌高決昭和51年5月31日判例タイムズ336号191頁)。

「法定養育費制度」の法制化は、父母間の合意で失われるかもしれない子の利益を守る上で、進歩があったと考えるべきでしょう。

通常の差押えでは、債務者にとって必要な生活費まで取られてしまわないように、債務者が有する給料、退職年金、賞与・退職金などの労働の対価として支払われている債権は、原則としてその4分の3の部分の差押えが禁止されていますが(民事執行法152条1項・2項)、養育費の支払いが滞った場合の差押えでは、その2分の1まで差押えが認められます(民事執行法152条3項)。

また、「法定養育費」を先取特権(※)とする予定とのことなので、未払いの養育費の取立てがしやすくなります。

※ 先取特権(さきどりとっけん)…一定の類型に属する債権を有する者に付与される、債務者の財産について他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利のこと

強制執行を行うには、債務名義(強制執行によって実現されるべき債権の存在および範囲を公的に証明した文書)が必要ですが、養育費債権の差押えのための強制執行に用いられる債務名義は、離婚調停の調書や強制執行認諾文言付き公正証書です。
しかし、離婚協議書を公正証書で作成せずに協議離婚したようなケースや上で述べたような父母の合意で「養育費を請求しない」と取り決めたでは、このような債務名義にあたる文書は存在しません。
債務名義を取得するには、一般的には裁判で勝訴する必要があり、これでは迅速な権利実現は望めません。

しかし、法定養育費債権を先取特権となった場合、先取特権は担保権なので、その取り立てのための執行は強制執行ではなく、担保権実行の手続きにより行われます。
担保権実行のために債権者が用意する文書は、先取特権の場合、「一般先取特権を有することを証する文書」となり、債務名義を取得する強制執行手続きに比べると大きくハードルが下がります。
すでに進行している強制執行手続き・担保権実行手続きに配当加入する場合も同様です。

勤め先が倒産した場合など雇用関係に基づく債権が先取特権になっていますが、その際に用意する「一般先取特権を有することを証する文書」は、過去の給与明細書、出勤簿の写し、就業規則等に、債権者の陳述書を添付します。
法定養育費債権の存在を証明する文書は、「子であること」「両親が離婚したこと」を証する書面(戸籍謄本)になるのでしょうか。

このように、離婚の原因がDV等の場合の懸念があるものの、子の利益実現のための法整備が同時に行われる模様です。



ブログランキングに登録しています。
応援してくださる方は、こちらのクリックをお願いします。
にほんブログ村 士業ブログ 司法書士へ にほんブログ村 士業ブログ 行政書士へ 司法書士ランキング 行政書士ランキング